「所有者不明土地問題」を考える


所有者不明土地問題の解消は、ここ数年で喫緊の課題となっておりますが、改めてどういう問題なのか、制度はどう変わったのか、土地所有者は何に注意したらよいか、についてまとめてみました。

1.所有者不明土地とは?
相続登記がされないことなどにより、以下のいずれかの状態になっている土地を「所有者不明土地」といいます。
①不動産登記簿上の所有者が不明な土地
②所有者は判明しているが、その所在が不明で連絡が付かない土地
※全国における所有者不明土地の割合は24%(R2国交省調査)とも言われています。

2.発生原因は?
所有者不明土地が生じる主な原因としては、以下があげられます。
①土地の相続の際に登記の名義変更が行われないこと(相続登記未了
②所有者が転居したときに住所変更の登記が行われないこと(住所変更登記未了
※従来、相続登記、住所変更登記は申請義務はなく任意であったことも一つの要因とされています。

3.問題点は?
所有者が分からない状態が続くと、以下の問題が発生します。
・土地の管理がされないまま放置され、周辺の環境や治安の悪化を招く。
・土砂崩れなどの防災対策のための工事を進めることができず、危険な状態が続いてしまう。
・公共事業や市街地開発などのための用地買い取り交渉ができず、土地の有効活用の妨げになる。
・民民間でも隣接地に所有者不明土地があると、土地の境界確認ができず、円滑な土地取引の妨げになる。

4.制度はどう変わった?
国は所有者不明土地問題の解消のため、「発生予防」と「利用の円滑化」の両面から以下の対策を実施しています。

①不動産登記制度の見直し——「発生防止」
相続登記の申請の義務化(令和6年4月1日施行)
住所等の変更登記の申請の義務化(令和8年4月までに施行)
・相続登記・住所等の変更登記の手続きの簡素化・合理化(令和8年4月までに施行)

相続土地国庫帰属制度の創設——「発生防止」
・相続した土地を手放す(所有権を国庫に帰属させる)ことができる制度の創設(令和5年4月27日施行)

③民法のルールの見直し——「利用の円滑化」
・土地・建物に特化した財産管理制度の創設(令和5年4月1日施行)
・共有地の利用の円滑化などの共有制度の見直し(令和5年4月1日施行)
・遺産分割に関する新たなルールの導入(令和5年4月1日施行)
・相隣関係の見直し(令和5年4月1日施行)

5.土地所有者が注意すべきこと
上記の制度見直しを受け、土地所有者が注意しなければならないことを以下にあげます。

相続登記の申請の義務化(令和6年4月1日施行)
(A)相続によって不動産を取得した相続人は、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならない。
(B)遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記を申請しなければならない。
→(A)(B)ともに、正当な理由がないのに義務に違反した場合、10万円以下の過料の適用対象となります。
※現在、相続登記がされずに放置されている土地も義務化の対象になりますので、注意が必要です。  

住所等の変更登記の申請の義務化(令和8年4月までに施行)
・登記簿上の所有者は、その住所等を変更した日から2年以内に住所等の変更登記の申請をしなければならない。
→正当な理由がないのに義務に違反した場合、5万円以下の過料の適用対象となります。
※現在、住所等の変更登記がされずに放置されている土地も義務化の対象になりますので、注意が必要です。  

相続土地国庫帰属制度について
<申請対象者について>
基本的には、相続や遺贈によって土地の所有権を取得した相続人であれば、誰でも申請可能ですが、土地が共有の場合には、共有者全員で申請する必要が有ります。(売買等によって土地を取得した方や法人については対象外)

<費用について>
申請する際には審査手数料を納付する必要があります。さらに審査を経て承認されると、10年分の土地管理費用相当額の負担金の納付が必要です。また、境界が明らかでない土地の場合、境界確定に係る費用も別途必要となります。

<国庫帰属が認められない土地の例>
次のような通常の管理又は処分をするに当たって過大な費用や労力が必要となる土地については対象外となります。
・建物、工作物、車両等がある土地
・土壌汚染や埋設物がある土地
・危険な崖がある土地
境界が明らかでない土地
・担保権などの権利が設定されている土地
・通路など他人による使用が予定される土地

以上

もっと詳しく知りたい方は以下を参照願います。(政府広報オンライン)

なくそう、所有者不明土地! 所有者不明土地の解消に向けて、 不動産に関するルールが大きく変わります!


PAGE TOP